AIのテクノロジーは、多くの産業に革命を起こしています。教育現場もそのひとつです。AIのプログラムが導入された教育現場では、「子ども子供の学習の遅れがなくなった」「従来よりも早い時間で学習が終わった」といった恩恵が表れているようです。こちらでは、教育におけるAIの活用事例やAI導入のメリット・デメリット、代表的なAIの教育プログラムについてご紹介します。
教育分野におけるAI導入の現状
まず、教育分野にAIが与えた影響を振り返っていきましょう。AIが教育の実施自体を取って代わる動きと、AIによって教材を改善する動きが見られています。
AIが教育において果たす多様な役割
かつて教育現場において人間が担当していた役割のいくつかに、AIが活用されています。
昔は子供が勉強する科目や問題を選択するのは子供自身、あるいは教師や塾講師でした。可処分時間を考えると、どの内容を重点的に学習するかによって将来の学力が変わってきます。学習する内容と時間配分を間違えると、大きなロスとなってしまいかねません。こうしたロスを防ぐためにAIのシステムが活用されています。システムに子供が学習してきた内容やテスト結果をインプットすれば、その後の学習計画や重点的にフォローすべき学習内容がアウトプットされます。AIの指示に従い勉強を進めれば、効率的に学習可能です。
また、職業や進路のアドバイスにAIを活用するケースもあります。教師による進路指導のように印象に左右されない、客観的なアドバイスが提供できる方法として評価が高まっています。
開発が進むAIを活かした教材
現在は、スマートフォンやタブレットのアプリとして教材をリリースする、「ICT教育」が普及している時代です。AIのテクノロジーは、当然ながら多くのICT教材に採用されています。教育のデジタル化に伴い、AIを活かした教材のリリースを急いでいるソフトウェア会社は少なくありません。
また、書籍を「ディープラーニング」という技術でわかりやすくする動きも目立っています。「ディープラーニング」は「ニューラルネットワーク」を用いた人工知能のシステムです。簡単に言えば、人間の脳が行っている複雑な情報処理の仕組みをコンピュータに再現させたAIの仕組みです。書籍の改訂など人間が行うと多くの工数がかかってしまうタスクを、AIに任せることができます。
また、学習が遅れている子供に対して自動的にフォローを行うAIのテクノロジーも開発が進んでいます。成長してから学習の遅れを取り戻すのは困難な場合がありますが、そうした問題もAIによって解消されるかもしれません。
AIを教育に導入するメリット・デメリット
AIを教育に導入する場合、メリット・デメリットを確認し、慎重に運用していく必要があります。
AIを教育に活用するメリット
AIは、子供が学習につまずいた際に適切なアドバイスを提供します。学習の過程で起こりがちな「何がわからないのか、わからない」という状況においても、道筋の最適解を示してくれるため効率的です。アドバイスは短時間でアウトプットされるため、次のステップに進むまでの時間を短縮できます。
また、その時学習すべき内容を適宜示してくれるため、勉強に無駄が生じません。すでに学習した内容に関しては、より理解が定着しやすいようにフォローを行ってくれます。内容が理解できない場合のアシストも的確です。
教育を提供する側としては、こうしたタスクをAIに任せられることがメリットとなります。教育者のサポートとしてAIを導入するのも有効です。
AIを教育に活用するデメリット
子供が成長していくと、学習の道筋や「自分にとって何が理解の妨げになっているのか」を自分で考えなければならないシーンが訪れます。道筋をすべてAIが提供する教育に慣れてしまうと、能動的に考える力が失われてしまうかもしれません。
AIは特定の内容を効率的に学習するツールとしては秀でていますが、一方で、「考える力」や「学ぶ意思」をAIによる学習だけで育むのは難しいでしょう。
AIを活用した主な教育プログラム
実際にAIを活用した教育プログラムが展開されています。その中から、いくつかをご紹介しましょう。
Qubena(キュビナ)
「Qubena(キュビナ)」は、株式会社COMPASSが提供するタブレットタイプのAI学習ツールです。生徒の学習レベルに応じて、マッチングの良い問題を提示します。間違えてしまった問題に関してはデータを蓄積し、「間違う原因」をAIが解析します。これにより、子供を解決まで誘導することが可能です。
導入実験では、通常14週間かかる授業の内容を2週間で学習終了させました。また、同社はキュビナを用いて効率的な学習を低コストで実現する「Qubena Academy」という教室を運営しています。
スタディサプリ
「スタディサプリ」はリクルートマーケティングパートナーズが運営する「インターネット予備校」のサービスです。2011年に受験情報を提供するサイトとしてスタートし、翌年にはスマートフォンやパソコン向けに、インターネット予備校のサービスを開始しています。
サービスの主軸となるのは講義の動画です。また、生徒の学習状況を把握できる到達度テストは中学校・高校など教育機関での利用例も目立っています。集積させたデータに対してディープラーニングによる分析を実施すると、生徒が解けない問題をある程度予測可能です。
Aidemy Team for school
「Aidemy Team for school」はAI人材プラットフォームを取り扱う「アイデミー」が2018年5月より提供開始したAI教育プログラムです。プログラムのベースには、同社独自の教材である「Aidemy」が採用されています。
教育機関向けに提供されているプログラムであり、学期ごとなど短いタームでの導入も可能です。導入した教育機関は同社のネットワークを活用した就職支援サービスも利用できます。また、オンライン授業だけではなく、著名な開発者による実地講義も予定されています。
TerraTalk
「TerraTalk」は、「聞く」「話す」「読む」「書く」という英語の4技能を、AIと英会話することで学んでいくアプリです。シチュエーションに応じた100以上のコースが用意されており、さまざまなシーンをロールプレイできます。法人・教育機関向けのプランも提供されており、実際に多くの教育機関で利用されているようです。
効率化、コストダウン……AIによって大きく変わる教育
今回ご紹介したのは、あくまでAIによる教育変化の一例です。今後は、さらにAIによる教育革新が進んでいく可能性があります。AIによる教育にはメリットの一方でデメリットもあるため、運用には注意が必要です。これまで人間の講師や教師が担っていた煩雑な教育タスクの多くはAIによって効率化されるでしょう。かわりに、人間の教育担当者は考え方や学ぶ意味の提供といった、より重要なタスクに集中できるようになるはずです。
お子様に提供するツールを検討している方は、個人でも利用できるAIのテクノロジーをチョイスしてはいかがでしょうか。また、塾や教育機関を選ぶ際も「AIのプログラムを活用しているか」がひとつの判断基準になるはずです。