「グローバル社会」という言葉は、今や一般的に定着したと言ってもよいでしょう。政治・経済・文化など、さまざまなレベルで国境を越えたやり取りが行われるのは当たり前の時代になっています。
そんなグローバル社会には、私たちにとってどんなメリットがあるのでしょうか。そして、私たちはそんな社会にどう適応していけばよいのでしょうか。改めてグローバル社会の意義と日本にとってのメリット・課題を整理するとともに、そんな社会へ対応するために子供には何をさせてあげればよいのか、考えてみましょう。
世界がグローバル社会へと進む理由とは
グローバル社会の概要と、世界がグローバル社会へ突き進む理由について簡単にご説明します。
グローバル社会とは
グローバル社会とは、地域や国家のレベルを超えて、世界規模でお互いに影響を与え合う社会形態のことを指します。
グローバル(global)が「世界的な」「地球全体の」という意味を持つことからも分かるとおり、政治や経済だけでなく、文化や芸術、情報などさまざまなシステムにおいて国境を越えたやり取りが行われることを特徴とします。
グローバル化が進む理由
グローバル化が進む理由を、経済体制の変化や交通インフラの整備、インターネットの普及という3点からご説明します。
・自由競争の推進
1990年の東ドイツ(ドイツ民主共和国)消滅、1991年のソ連(ソビエト社会主義共和国連邦)崩壊など、1990年代に社会主義や共産主義を採用していた国家の多くが消滅しました。中国や北朝鮮のように、政治体制は維持しつつ経済的には資本主義を取り入れる国家も増えています。その結果、資本主義国家が世界の大多数を占める状況となりました。
資本主義が世界を覆ったことで、国を超えた自由競争が推進されやすくなりました。ビジネスの規模も拡大し、いわゆる「グローバル企業」も増えています。これらの点が、グローバル社会の一翼を担っていると考えられます。
・交通インフラの整備
船や飛行機など、交通手段が発達したこともグローバル化につながっています。スピードが増してコストが下がったことで、国家間を比較的安価に移動できるようになったのです。その結果、人材や資本の流動性が増すことになりました。
・情報社会の発展
さらに重要なのは、やはりインターネットの普及を中心とした情報社会の発展でしょう。無料で世界中の情報にアクセスでき、無料で世界に対して情報発信することが可能となりました。メール、チャット、テレビ電話と、外国の人とつながるツールも急速に整備されました。
ここでポイントとなるのが、働く環境の自由度アップです。コミュニケーションツールとインターネットさえあれば仕事ができる人は、働く環境(国)を問わず活動できるようになりました。これによって人材の流動性が大きく高まったわけです。
グローバル社会のメリット
グローバル社会の進展は、世界と個人にどんなメリットをもたらしたのでしょうか。国や地域同士の相互作用という観点から、3つのメリットをお伝えします。
最適な場所で生産活動を行えるようになる
輸送インフラの質が向上したことで、国際的な分業体制が進みました。わざわざ自国の不得意な原料や製品を自国内で調達するより、外国から輸入した方が低コストで済むケースが増えました。国や地域単位でも、自らの得意分野に注力した方が生産的なのです。
生産活動のコストが下がったことで、物価の低下にもつながり消費者に恩恵をもたらしています。中国を始めとしたアジア各国で作られた商品を並べている100円ショップは、生産拠点の最適化がもたらしたと言えるかもしれません。
文化が発展しやすくなる
国境の内部で受け継がれてきた文化が外部に開かれ、お互いに混ざり合うケースが増えました。YouTubeを始めとした動画サイトを検索すれば、海外のローカル文化の情報をすぐに入手できます。その結果、新たな文化が生まれる可能性が広がったと考えられます。
国同士のつながりが密接になる
貧困や環境、人権、戦争などの社会問題も、国境を越えてグローバルに広がっていることは否めません。しかしその一方で、その問題解決の手段や担い手もグローバル化していると言えます。
たとえば、国同士が密接に関係し合うことで、暴力的な紛争解決手段のデメリットが大きくなり、結果として戦争抑止につながっているとされています。また国際的なNGOの存在感が増していたり、外国の社会問題が即座にグローバルに知られるようになったりすることで、グローバルな問題に対する人々の関心も高まっている可能性があります。こうした傾向は、グローバル社会(特に情報技術の発展)の大きなメリットと言えるでしょう。
グローバル社会の実現に向けた日本の課題
急速に進むグローバル化の中で、日本はどのように振る舞う必要があるのでしょうか。グローバル化のメリットを最大化し、デメリットを防ぐ観点から3点ご説明します。
産業の空洞化を防ぐ
グローバル化が進展すると、人件費が安く労働者の確保が容易な国へ生産拠点が流出する可能性があります。こうなると国内産業の生産性と競争力が低下し、産業の空洞化を招く恐れがあるのです。
産業の空洞化を防ぎ日本の経済や社会を守るためには、国内生産に対して恩恵が得られるようにする必要があります。海外からの投資を促すとともに、企業の法人税を引き下げるなどの手段が考えられます。
優秀な人材の流出を防ぐ
生産拠点だけではなく、優秀な「グローバル人材」がよりよい待遇と労働環境を求めて流出する事態を防ぐ必要があります。日本で働きたいと思わせるような環境を整えるために、高所得者を対象とした減税や所得控除の拡大などのインセンティブを設けるなどの手段がありえます。
治安を維持する
もともと移民が少なく、治安も世界的に良好とされる日本社会ではありますが、それだけに世界中から日本人以外の人々が流れ込むとあちこちで衝突が増える可能性があります。文化や考え方の違いに伴う衝突だけでなく、伝染病や感染症、テロなどのリスクにも留意しなければなりません。衛生管理の強化や警備体制の再構築が求められます。
グローバル社会で活躍するために子供に準備させたいこと
次世代を生きる自分の子供に「グローバル社会をうまく生き抜いてほしい」と考える保護者の方は多いと思います。どんな準備が必要か考えてみましょう。
海外で活躍できるスキルを身に付けさせる
日本国内だけでなく、国際的に通用するスキルを優先的に学習させることは考えておくとよいでしょう。英語力はもちろん、情報技術の発展を見越してプログラミングの基本的な考え方やコミュニケーション能力を身に付けさせるのもよいかもしれません。
プログラミングは難しいという固定観念があるかもしれませんが、案外小さい頃からやらせた方が早く身に付くものです。文部科学省も、2020年から小学校におけるプログラミングの必修化を実施します。プログラミングスクールやインターネット上のプログラミング教材などを有効活用して、子供にすすめてみることをおすすめします。
ただし、あくまで子供自身の興味や関心を大事にすることです。一昔前の「教育ママ」のように、子供の意に反して英語やプログラミングを押しつけてしまうと、どちらも嫌いになってしまうリスクがあります。まずは「楽しい」と思わせることが重要です。
多様性に触れさせる
LCC(格安航空会社)の増加により、海外旅行のコストも昔と比べると下がっています。海外へ積極的に足を伸ばしたり、国内でも外国人と国際交流したりする機会を増やすとよいでしょう。異文化や外国人、外国語と接点を持てる環境を作ってあげてください。
多種多様な価値観に触れさせることで多様性を尊重する考え方への理解が進みますし、勉強や仕事に対する視野が広がる可能性もあります。保護者とのコミュニケーションのきっかけにもなるでしょう。
大人も子供もグローバル社会での生き方を考えよう
グローバル社会の進展には批判的な意見も多く、課題も少なくありません。しかし、グローバル社会をもたらしたインフラや技術の進展を元に戻すことはできませんから、そうした社会のあり方を前提として生き方を考える必要があります。
生き方を考える必要があるのは、次世代を生きる子供たちだけではありません。「人生100年時代」と言われる昨今、30代から40代でも残り数十年を生きる可能性が高いことを踏まえると、親世代も加速するグローバル社会での立ち居振る舞いを考えなければならないでしょう。まずは子供と一緒に、将来の社会と「なりたいもの」「やりたいこと」を話し合ってみてはいかがでしょうか。