IT教育の目的とは?国内の現状から、企業、海外の取り組みまで

ブロンドの少年少女がパソコンを見ている

近年、日本では子供たちへのIT教育の重要性が叫ばれています。もちろん、IT教育は日本だけで注目されているわけではありません。さまざまな国が、いくつもの方法でIT教育に注力しており、日本より教育が進んでいる国も少なくありません。こちらでは、日本のIT教育の現状や、企業・海外で行われているIT教育の取り組みをご紹介します。

日本のIT教育の現状とは

日本をはじめ、世界のIT教育はまだ始まったばかりの段階です。日本におけるIT教育の現状を知っておきましょう。

IT教育の目的

日本におけるIT教育は以下のようなポイントを目的としています。

●ICT(情報通信技術)を教育に活用し、授業を効率化する

電子黒板やパソコン、タブレットといったデバイス、ICT(情報通信技術)を教育で活用するのが一般的になりました。こうしたデバイスによって調べ物やメモ書きが効率化されています。また、学習塾などの教室でもこうした技術が導入され、工数の削減やコストダウンに一役買っているようです。

●子供たちの学習内容への興味、関心を高める

ITは、子供たちが抱く学習への興味向上にも貢献しています。学習の遅れを防ぐため、またはさらなる学力向上を促すため、子供に応じてマッチング度の高い問題を提示するシステムが活用されているようです。これにより、子供それぞれの学力レベルにあわせた学習が可能となっています。掲示板、メール、チャットなど、子供たちと教育者のコミュニケーションを円滑にする仕組みも使われています。

IT教育の現状

続いて、日本におけるIT教育の実際の普及度についてお話します。

1990年代半ば以降に生まれた子供たちは「デジタルネイティブ」と呼ばれており、生まれたときからインターネットやパソコンが存在していた世代です。とりわけ、近年の子供は物心ついたときからスマートフォンやタブレット端末に慣れ親しんでいます。紙媒体より、むしろこうしたデバイスに慣れている子供が多いかもしれません。

つまり、子供たちのITに対するハードルは下がっているということです。時代の流れと共にテレビやエアコンといった電化製品が当たり前になっていったように、今の子供たちにとって、電子端末は当たり前の存在になっています。そのため、小学校低学年からIT教育を始めても問題はないという意見が多いようです。

IT教育の中で、最も大きな変化と言えるのが、2020年からの「プログラミング教育の必修化」ではないでしょうか。先述したITデバイスの一般化にともない、国内のIT人材不足が深刻化している背景を受けて下された決断です。プログラミングにあわせて、ITリテラシーの教育なども行われる見込みです。

また、この必修化を受けて子供の習い事も変わり始めています。2017年の「子供に習わせたい習い事ランキング」では、プログラミング教室が1位になりました。理由として「将来のためになると考えた」という声が多く、親世代からも「子供のためになること」として認識されているようです。

IT教育に関する企業の取り組み

Webサービスの会社やソフトウェア会社もIT教育のニーズにあわせて展開を始めています。具体的な取り組みをご紹介しましょう。

教育系アプリやWebサービスを開発

子供たちをターゲットとした教育系アプリやWebサービスの開発に注力するIT企業が目立っています。あるいは、それまで参考書などの教材を出版していた会社がアプリ・Webサービスの提供を始める場合も少なくありません。いずれも単なる学習教材の提供にとどまらず、学習の進捗確認、進度に応じた適切な問題提供などITを組み込んでいるからこそ実現可能な機能が付与されています。

また、こうした技術で効率的な学習が可能になり、子供に提供する教育の幅も広がりました。海外のユニークな例として、宗教教育の一部がIT化され始めています。聖書の内容を手軽に確認できるアプリなどが普及しているようです。

教師へのサポートサービスを展開

ITや人工知能が普及を始めている現在も、教育現場の中心にいるのは当然ながら人間の教師です。子供たちが触れるWebサービスやアプリだけではなく、教師の業務をサポートするシステムを提供する企業が増えているようです。

教育機関でも活用できる教材ツールを提供している企業のほか、宿題作成や提出物の受け取りなど、煩雑な管理業務を簡単にできるシステムを開発している企業もあります。教師の時間的・精神的圧迫が軽減されるため、生徒とのふれあい、相談対応などITでは担えない業務に集中することができます。

また、教師・生徒・保護者といった教育現場間でのコミュニケーション用ツールを提供している企業もあります。電話やメールよりも気軽で密接なコミュニケーションが可能になることから好評です。

IT教育に対する海外の取り組み

日本以外でも教育に対するIT導入は盛んです。日本より進んでいる国もあり、モデルケースとされている国もあります。

各国で広がるIT教育

IT技術の進化にともない、日本以外の各国でIT教育が進められています。日本では2020年からプログラミングが必修化されますが、すでに子供たちへのプログラミング教育が始まっている国もあります。そうした国々と比べると、日本のIT教育はまだ後進的と言えるかもしれません。また、プログラミング教育に対して助成金を出すなど、国を挙げてIT人材の創出に乗り出している例もあります。

海外の具体的な取り組み

各国の具体的な取り組みをご紹介します。

・エストニア

「電子国家」として多くの国からIT教育のモデルケースとされているのがエストニアです。行政サービスの約99%が電子化されており、国民全体に「ITはなくてはならない技術」という認識が根付いています。IT教育を主導しているのは2012年に発足した政府関連組織「Tiger Leap基金」です。プログラミングやロボット開発の教育を通じて、「論理的思考」を身に着けさせる教育に注力しています。

・イギリス

イギリスでは、2014年からプライマリースクール(小学校)の教科として「Computing」が追加されました。これは、1999年より開始されていた「ICT」の教科の、アルゴリズム・プログラミング言語などの分野を強化した科目です。ユーザーとしてツールを使う能力だけでなく、開発の視点に立った思考力を身に着けることが主眼となっています。IT教育の拡大、ニーズの急増に対して教育が不足しているようですが、国が補助金を提供するなどサポートが行われています。

・オーストラリア

オーストラリアでは、IT関連の授業だけではなくすべての授業をパソコンベースで行う教育スタイルが普及しています。国からデジタル教材が提供されるなど、サポートも万全です。また、「家庭でのIT教育」を目指し、親に対する研修を実施している地域もあります。広大な土地を有している国、病気や家庭の事情から通学が困難な子供たちのためにインターネットを利用して授業を実施するシステムも活用されているようです。

紙の教科書はなくなるかも?今後のIT教育にも要注目

2020年のプログラミング必修化にともない日本のIT教育も少しずつ充実していく見込みです。教育現場におけるデジタルデバイスの普及を考えると、紙の教科書がなくなる日もそう遠くないかもしれません。今後も、教育におけるITの活用状況に注目していきましょう。

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