子供に「なりたい職業」を言われて、戸惑ってしまった経験はないでしょうか。スポーツ選手やアイドル歌手など、あまりに突飛な職業を挙げられてしまい、どうすればなれるのかも分からずまともに取り合うことができなかった……そんな保護者は多いものです。
しかし、子供のなりたい職業の探し方やなり方を知っておくことは保護者として重要なことのはずです。今回は、趣味や特技から見つけるなりたい職業の探し方をご紹介します。
なりたい職業の探し方
なりたい職業をどこから探せばよいのか、というところから考えてみましょう。どんな子供にも、何かに心を動かされた経験があるに違いありません。
自分の趣味や好きなものから考える
まずは趣味や好きなもの・ことをピックアップして、そこからなりたい職業やなれそうな職業を考えてみるのが王道のやり方でしょう。今の子供自身が好きなもの、これまで好きになったものなどを中心に考えてみます。
頭の中だけで考えるより、実際にノートやメモなどに手で書き出してみるとよいでしょう。書き出した「好き」同士に何か関係性を発見したり、逆にやりたくないことを発見したりできます。
なるべく頭の中を絞り出すようにたくさんの「好き」を列挙すると、考えやすいです。その際、「これはどうせ職業につながらないからやめなさい」など子供の考えにストッパーをかけることをせず、自由に書かせるようにしてください。親の自分ですら思いも付かないような発見があるかもしれません。
自分の特技や長所から考える
主観的な好みだけでなく、客観的に「できること」を軸としてなりたい職業を考えるのもおすすめのアプローチです。自分の特徴を掘り下げて、長所を突き詰めることでなりたい職業につながるかもしれません。
一般的には長所を伸ばしていく方がよいのですが、できれば長所だけでなく短所についても書き出してみてください。学校レベルでは「飽きっぽく集中力が長続きしない」と短所にされるようなことも、見方を変えると「好奇心が旺盛」と長所になりうるケースも少なくありません。
長所を発見できると子供の自己肯定感にもつながりますし、そこを伸ばすことでなりたい職業が見えてくる可能性が高いです。
最近感動したものから考える
好きなことや特技・長所が見つからないと悩む子供もいるかもしれません。それまで学校や家庭、人間関係の中でほめられた経験がないと、自分に自信が持てないものです。
その場合は、自分が感動した本やアニメ、マンガ、映画などの作品や出来事などを思い出してみるとよいでしょう。心を動かされた経験を見つけるために、新たなチャレンジを試みるのもおすすめです。そうした新鮮な経験から、新たな自分を発見できる可能性もあります。
将来のライフスタイルから考える
現在の自分だけでなく、将来の「なりたい自分」から職業を考えるアプローチもあるでしょう。小さな子供には考えにくいかもしれませんが、ある程度世の中の見えてきた高校生や大学生であればこうしたアプローチもおすすめです。
どんな生き方をしたいか、どんな風に仕事をしたいか考えてみます。やりがいの持てる働き方とプライベートのバランス(ワークライフバランス)を考えたうえで、なりたい職業をあぶり出すように選ぶわけです。
子供がなりたい職業の主な例
参考までに、子供がよく挙げる「夢の職業」の例をご紹介します。必ずしもこれに従うべきではありませんが、子供の将来を考えるうえで気づきを与えてくれるかもしれません。
スポーツ選手・監督
なりたい職業の代表例として、今も昔も小学生から中学生男子の「人気職業ランキング」を調査したら上位に入ってくるでしょう。サッカーや野球など、日本でメジャーなプロスポーツの選手が特に人気を集めています。日本FP協会が実施した作文コンクールの内容から、小学生のなりたい職業を集計したところ、2017年は「サッカー選手・監督など」が男の子の1位、「野球選手・監督など」が2位、「バスケットボール選手・コーチ」が7位に入りました。
マスメディアへの露出度も高いことから、その華やかさや収入の高さを子供でもイメージしやすいのが人気の理由かもしれません。
看護師
女子のなりたい職業として昔から人気なのが、看護師です。薬剤師や獣医、医師など、医療関連の仕事にも人気が集まっています。前述のランキングによると、女の子の1位が看護師、3位が医師、6位が獣医、7位が薬剤師となっています。
看護師になるには、看護師国家試験をパスする必要があります。看護師学校や看護大学など、専門の学校に通うことで受験資格を得られます。
医療現場の仕事は昼夜を問わず発生するため、看護師には体力的・精神的なタフさが求められます。そのため、より勤務時間が安定していてニーズも高い医療事務の仕事も女性に人気となっています。
公務員
経済的な安定度が高いイメージから、子供にも人気のある職業です。公務員は主に地方公務員と国家公務員に分かれ、さらにその中でも部署によってさまざまな仕事を経験する可能性があります。
地方公務員の中には、一般的にイメージされる事務職だけではなく、消防士や救急救命士、看護師や教師なども含まれます。いずれも採用試験を必要とする職業ばかりです。一方の国家公務員にも中央省庁の官僚のみならず警察官や外務省・防衛省などの専門職、国税や財務の専門官などさまざまです。
保育士
保育士は看護師や美容師などと並び、女の子の人気の高い職業の一つです。特定の大学や専門学校などに通ったり、児童福祉施設等での勤務経験があったりすると保育士試験の受験資格を得られます。試験に合格して保育士資格を取得すれば、保育士として勤務できるようになります。
パティシエ
「ケーキ屋さんになりたい」と話す子供は多いものです。ホテルやレストラン、洋菓子店でケーキを始めとした洋菓子を作るパティシエも高い人気を誇ります。
パティシエになるためには、製菓衛生師か製菓製造技能士のいずれかを取得する必要があります。特に、パティシエの多くは製菓衛生師資格を保有しています。製菓衛生師の受験資格を得るためには、製菓専門学校を卒業するか2年以上の実務経験を積み重ねる必要があります。
一方の製菓製造技能士は、一定レベル以上の製菓技術と知識を証明する資格です。必須とは言えませんが、ぜひ取得するべきでしょう。下位の2級を受験するには、特定の学校の卒業か2年以上の実務経験が求められます。
YouTuber(ユーチューバー)
動画サイトYouTubeに動画配信を行い、閲覧数に応じて広告収入を得る仕事です。YouTube以外の動画サイトも増えており、作り込んだ動画やライブ動画など露出の方法も多様化しています。人気YouTuberがマスメディアにも進出するなど、近年子供の人気が高まっています。
YouTuberになるのに資格は不要ですが、動画の撮影や編集、投稿などの作業を覚える必要はあります。定期的にネタを企画し、撮影し、編集し……と、イメージに反して勤勉さが求められる仕事です。
プログラマー、システムエンジニア
プログラマーやシステムエンジニア、あるいはゲームクリエイターも人気職業の一つと言ってよいでしょう。先ほどご紹介したランキングでも、「ゲーム制作関連」が男の子の4位に入っているほどです。将来的にも情報技術分野の人手不足が予想されており、世界的に需要の高い職種と考えられています。人材不足のため、平均賃金は比較的高いケースが多いです。
必須資格や学歴はありませんが、プログラミング言語やITに関する知識とスキルが求められます。ただし、資格を持っていると就職や給与の面で優遇される可能性もあります。
子供がなりたい職業に就くために親がサポートできること
親心として、子供には希望する職業に就いてほしいものです。そこで保護者がサポートできることはなんでしょうか。
就きたい仕事に必要なスキルを子供に教える
子供が「○○になりたい」と言い出したとき、その職業の具体的な業務内容やなり方まで認識しているケースはほとんどありません。
保護者としては、どんな専門知識や経験、能力が求められるのか、それを身に付けるには何をすればよいのか教えてあげましょう。職業に就くまでの道のりがはっきり見えると、子供としてもあいまいな夢を具体的な目標として捉えることができるはずです。
スキルを学ぶための具体的なプランを子供と一緒に立てる
さらに一歩踏み込んで、子供が将来必要になるスキルを学習する計画を親子で一緒に考えてみましょう。いつまでにどんなことを勉強すればよいのか、どんな高校や大学へ進めばよいのかなど、親子で計画を共有するとよさそうです。
またモチベーションを維持できるように、計画に沿って進んでいるかチェックしてあげてもよいかもしれません。ただ親に頻繁にチェックされることを嫌がる子供も少なくありませんから、そこは子供の性格に 合わせて見守り方を調整してください。
なりたい職業になるための道筋を示すのも親の役割
子供の頃になりたかった職業になっている人は、ほとんどいません。理由はいろいろあるのでしょうが、その一つとして「どうすればなれるのか分からなかった」ということが挙げられます。その職業への道筋を教えてもらっていたら、人生が変わっていたかもしれない……そんなことを考える人もいるはずです。
そこで、子供にはなりたい職業への道筋を教えてあげましょう。実際にその職業にならなかったとしても、何か目標に向かって具体的な道筋を検討し、一歩ずつ進んだ経験を持つことは子供の人生の中で大変貴重な社会勉強となります。子供の夢や興味関心を尊重し、大人としてできる限りのサポートをしてください。