学生が起業するメリット・デメリット|親がサポートできることとは?

ノートパソコンを抱える大学生

IT技術の普及によって、起業するだけであれば複雑な手続きやコストが必要なくなりつつあります。そのため、最近では大企業への就職ではなく学生時代のうちに起業することも選択肢の一つとして考える学生もいるでしょう。今は幼稚園や学校に通っている自分の子供も、将来「起業したい」と言い出すかもしれません。そんなときに、親はどう関わればよいのでしょうか。

今回は、学生が起業するメリット・デメリット、そして親ができることについてご説明します。

学生が起業するメリットとは?

まずは在学中の起業のメリットを考えてみましょう。学生段階であれば、リスクを取って起業のメリットを享受できる可能性は高いです。

リスクが少ない

仮に失敗したとしても、社会人の起業に比べればリスクはあまりありません。

たとえば、親元から学校に通っている人であれば、起業が失敗しても衣食住には困りません。これに対して、家庭を持つ人が失敗すると家族の生活に大きな影響を及ぼすことになります。もちろん会社を辞めてから起業するのもリスクが高く、失敗したときに住む場所にも困ることも考えられます。

学生が起業に失敗しても、むしろ社会的には「勲章」「社会勉強」としてポジティブに見られる可能性もあります。成功しても失敗してもリスクが少ないのであれば、チャレンジする価値は大いにあるのではないでしょうか。

経験値が上がる

会社設立からプロダクトの作成やマーケティング・営業、資金調達、組織づくり、財務・会計処理など一般の学生ではできないような経験を積み重ねることができるので、人間的に成長できます。

そして何より、事業を通じて積み重ねた成功体験と失敗体験は、仮に事業を辞めてしまった後も仕事に生かせます。実際、ほかの学生より優秀であるということで起業経験を持つ学生を採用したいと考える企業は多いものです。起業によって社会で活用できる貴重な知識・経験を身に付けられるためです。就職活動においても、起業経験は大きなアピールになるでしょう。

人脈づくりができる

事業を通じて多くの経営者や投資家との人脈ができる可能性があります。一般的な大学生生活を送っているだけでは、到底会えない人とも話ができるでしょう。

理念や目標を持って事業に取り組んでいれば、共感してくれた経営者や投資家などがアドバイザーやメンター、出資者になってくれることもあります。人脈が連鎖的に広がり、事業はもちろん私生活にも役立つかもしれません。

時間と体力がある

学生は、社会人より時間的にも体力的にも余裕があります。どうしてもスタートアップの立ち上げには時間とタフさが求められますので、この点でも学生は社会人より有利です。

学生が起業するデメリットとは?

学生段階だと社会人経験がないため、どうしてもデメリットもあります。考えられるデメリットを3点挙げてみます。

社会人経験が乏しいため、苦労することが多い

社会人経験がないにもかかわらず、社会人のいる世界で社会人を相手に事業を展開しなければなりません。この点は大きなハンデとなります。

たとえば、社会人が誰でも知っているようなビジネスルールやマナーを知らず、恥をかいてしまう可能性があります。名刺の渡し方や商談するときの服装・身だしなみなど、ちょっとしたところに違和感を持たれるだけでも不利になります。あらかじめルールやマナーに関する本やインターネット記事を熟読し、最低限こなせるだけの知識は頭に入れておくべきでしょう。

ルールやマナーといった外形的な部分にとどまらず、事業内容についても不利な面があります。それは、社会人をターゲットとする事業を考えることの難しさです。どうしても社会人になったことがないわけですから、彼ら・彼女らの気持ちや行動を把握しにくいです。そのニーズを詰め切れず、顧客の気持ちに寄り添えない学生起業家は少なくありません。

学業と事業運営の両立が難しい

学生にとって、学業と事業運営の両立は大きな問題です。事業が楽しくなってのめりこんでしまうと、相対的に学生生活がおろそかになります。事業を進めながら大学に通い、それなりの成績をおさめる「二刀流」は口で言うほど容易なことではありません。

ベンチャー企業の経営者の中には、大学中退を選択する人も少なくありません。米アップルの創業者であるスティーブ・ジョブズも、大学中退を経験しています。しかし、大学に通わせてくれた親のことを思うと、一応卒業だけはしておきたいと考えてジレンマに悩む起業家の卵もいます。

資金調達が難しい

学生の運営している事業は、資金調達に苦しむ傾向にあります。アルバイトを掛け持ちしたところで収入は月数十万円程度であり、生活だけならまだしも事業を続けるには到底足りません。自分で大きな資金を得るのが難しいため、初期投資に莫大な資金を要するビジネスモデルには挑戦できないのです。

そうかといって、資金を借りる方法も限られています。一般的には銀行や信用金庫などから融資を受けるわけですが、会社勤めの社会人のような信用や担保を持たない学生にお金を貸してくれる可能性は高くありません。結果として、金利の高いカードローンやフリーローンで何とかやりくりするケースも散見されます。また家族から借り、クラウドファンディングを行ったりして資金を集めることも多いです。

ただし、日本政策金融公庫の「新創業融資制度」の利用条件を満たせば、大学生の事業でも最大3,000万円まで無担保・無保証人で借り受けることができます。そのほか、住んでいる自治体によっては起業家支援として資金の融資を行っているケースがあります。たとえば、東京都の産業労働局では「女性・若者・シニア創業サポート事業」として1,500万円以内、固定金利1%以内という好条件の融資制度を設けています。

子供が起業の姿勢を示したときに親ができること

ここまでは一般論として学生時の起業のメリットとデメリットをお伝えしてきましたが、それでは子供が起業を志したときに親として何ができるのか考えてみましょう。

起業の意思を尊重する姿勢を忘れず、冷静にアドバイスする

冷静かつ生産的なアドバイスが求められます。どうしても子供が成人するまでは、親の発言力の方が子供に勝ってしまいがちです。そこで親が頭ごなしに反対すると、あっさり諦めてしまう可能性も低くないのです。

逆に親が子に干渉しすぎなければ、子供の人生の可能性が広がるかもしれません。なるべく、子供の頭にある事業内容を聞いてから判断するようにしましょう。

事業内容を聞くと、たいがいどこか抜け落ちている視点に気づくと思います。どうしても学生の言うことですから、抜け漏れなく細部まで詰め切れているケースは(よほど天才的な事業家でない限り)ないはずです。初めからネガティブなことばかり発言せず、前向きなアドバイスをしてあげましょう。もちろん、あまりに非現実的なアイディアは止めることも大切です。

子供の考えに共感できたら、起業を後押しする

「起業を後押しする」と言っても、その具体的な方法はいくつか考えられます。ここでは3種類の方法をご紹介します。

・若者向けの起業塾に参加させる

学生の起業が増えていることもあり、最近では20代以下の若者を対象とした塾・スクールのようなところも出てきています。商品企画、事業計画立案、融資、商品制作、広告宣伝、販売活動、決算など、会社を立ち上げ経営するのに必要なステップを学べるのでおすすめです。

ただし、中には高額な授業料・入会費を要求して内容のない講義を提供する悪質な塾があるかもしれないので、確認の必要があります。

・知り合いの社会人を子供に紹介する

親自身が起業経験を持たない場合、うまいアドバイスをするのは難しいかもしれません。それなら、子供にうまいアドバイスをしてくれそうな友人・知り合いの経営者を紹介するのもよいでしょう。経営者の知り合いがいないなら、より経営に近い仕事をしている管理職の知り合いでも構いません。

親の紹介であっても、子供のネットワークづくりの助けになります。よいことばかりではない起業の実体についてもリアルなアドバイスをしてくれますから、子供にとって貴重なつながりになるでしょう。知り合いの経営者の会社にインターンさせてもらい、実地経験を積めれば理想的です。

・親子で起業する

最終手段として、親子で起業する手も考えられます。子供が考えたビジネスプランをサービスとして形にし、会計や渉外など子供が不得手な点を親がサポートするスタイルが最もうまくいきそうです。実際に親子で事業を成功させるケースがないわけではありません。

親は子供の学生起業をいかに見守るかが重要

子供が学生のうちに起業したいと話してきたとき、親としてどう関わればよいのか難しいところです。子供の性格や検討している事業内容にもよりますので、唯一の正しい関わり方があるわけではないでしょう。積極的に親がアドバイスするのが絶対的に正しいとも言い切れないのです。

ただし、少なくとも頭ごなしに否定することはせず、話を聞く必要があります。非現実的な事業と感じられたらそれを伝えればよいでしょうし、それにもかかわらず親の意見を聞き入れなさそうであれば、あえてそのまま突っ走らせるのも一つの親心と言えます。失敗しても学生のうちであれば「かすり傷」のようなものと腹をくくって、子供が突き進むのを最初は見守るのもよいかもしれません。

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