インダストリー4.0|「第4次産業革命」がもたらす日本への影響とは?

手でパズルのピースを持っている

近年、デジタル化やIoT、AIなどに関する情報とともに「インダストリー4.0」という言葉を目にする機会が増えています。これはもともとドイツで提唱されたコンセプトですが、国境を越えて日本でも取り上げられるようになりました。特に今後の製造業の動向を見る上で、非常に重要なコンセプトと言えます。

そこで今回は、インダストリー4.0の基礎知識と各国への影響、今後の課題についてご紹介します。

ドイツ発の産業革命インダストリー4.0の特徴

インダストリー4.0は、ドイツの国家プロジェクトです。2010年代半ば以降、日本でも取り上げられる機会が増えました。どんなコンセプトで何が「4.0」なのかご説明します。

インダストリー4.0とは?

インダストリー4.0(Industrie 4.0/Industry 4.0)とは、直訳すると「第4次産業革命」で、IoTやAIを活用して産業革新を目指すというものです。2011年にドイツ工学アカデミーが発表しました。ドイツ政府が推進する製造業ビジネス変革を指向する新コンセプトであり、トップダウン型の国家プロジェクトです。同様のコンセプトはドイツのみならず世界中で提唱されていますが、中でもドイツの事例がコンサルタントやメディアなどで何度も取り上げられたことから、日本でも特に知られるようになりました。

インダストリー4.0という言葉には、4回目の産業革命を目指そうという思いがこめられています。18世紀半ばから19世紀に発生した綿織物業の技術革新、製鉄業の発達、蒸気機関の登場などを産業革命(第一次産業革命)、19世紀後半の印刷機や化学・石油・鉄鋼などを中心とする重化学工業の発達を第二次産業革命と呼びます。

第三次産業革命については、一般的な学術用語として定着していないものの、1990年代以降のインターネットの発達を指すことが多いです。インダストリー4.0とは、第三次産業革命によってインターネットでつながった世界において、従来の製造業を再定義しようとする試みと解釈できます。

インダストリー4.0のコンセプト

IoTやAI、ロボット、ビッグデータを活用する「スマートファクトリー(考える工場)」がコンセプトの根幹です。アプローチとして挙げられるのは「生産工程やバリューチェーンのデジタル化・自動化によるコストカットや生産性の向上の実現」や「IoTやAIの導入により、設備の稼働状況に関するビッグデータを収集・分析」などです。たとえば、部品にチップを埋め込み、リアルタイム情報を集めて管理するなどが代表例です。

消費者ニーズの多様化によって、製造業は大量生産指向から少量多品種生産指向へ移行しています。インダストリー4.0は、個々の企業レベルでなく国家レベルのコンセプトであるために、単独の工場のみならず複数の工場同士で標準化・情報共有を進め、効率的な生産体制の構築を目指していきます。

従来のICT活用との違い

もちろん、インダストリー4.0が提唱される以前もCAD(コンピュータによる設計支援ツール)やセンサーの導入など製造業ではデジタル化を進めていました。しかし、それらの試みはあくまで部分的な生産・設計プロセスの合理化にとどまり、工場全体、あるいは国全体の生産効率アップという視点はあまりなかったとされています。

しかし、インダストリー4.0によって、デジタル技術を活用した製造業の全体最適を目指す動きが高まったのです。

インダストリー4.0の世界への影響

ドイツが提唱するインダストリー4.0以外でも類似のコンセプトが打ち出されています。日本・アメリカ・中国の事例を見てみましょう。

日本

ドイツと同様にものづくりに強みを持つとされる日本は、ドイツのハノーバーで2017年に開催された「国際情報通信技術見本市(CeBIT2017)」において「Connected Industries(コネクテッドインダストリーズ)」というコンセプトを提唱しました。これはモノとモノ、人と機械・システム、企業と企業、生産者と消費者などの「さまざまなつながり」によって新たな付加価値が創出される産業社会を指しています。内閣府が提示した、サイバー空間(仮想空間)とフィジカル空間(現実空間)を高度に融合したシステムによる人間中心の社会「Society5.0」を実現するための動きのひとつです。

Connected Industriesは、以下の3つの柱で構成されるといいます。
・人と機械・システムが対立するのではなく、協調する新しいデジタル社会の実現
・協力と協働を通じた課題解決
・人間中心の考えを貫き、デジタル技術の進展に即した人材育成の積極推進

経済産業省は、Connected Industriesの実現に向けて今後、各種施策を推進する予定です。

アメリカ

アメリカでは「インダストリアルインターネット」というコンセプトが提唱されています。これは、家電・航空・医療・発電などの巨大コングロマリットであるゼネラル・エレクトリック社(GE)が2012年に発表したものです。

その後、半導体大手のインテル、ネットワーク大手のシスコシステムズ、IT大手のインターネット・ビジネス・マシーンズ(IBM)、通信大手のAT&TおよびGEが主導となり、「インダストリアル・インターネット・コンソーシアム」を2014年に立ち上げ、世界中の企業に参加を呼びかけてデータ連携やソフトウェア活用による生産性向上を目指しています。

こうしたコンセプトは、IoTよりもサイバーフィジカルシステム(Cyber Physical System : CPS)と呼ばれることが多くなっています。

また、ICT技術を活用したコスト削減を支援する産業サービスが行われており、ドイツのインダストリー4.0はこのサービスをもとに発表されました。

中国

中国では、製造業強化を目的として2015年に「中国製造2025」戦略計画を公表しました。量的な拡大を遂げた中国製造業を質的に変革し、生産品質の高度化と効率化を目指しています。

中国製造2025では、3ステップで製造強国になるという戦略的目標を掲げています。既に2015年の時点で製造業規模は世界第一位に躍り出ていましたが、10年後の2025年には格差縮小と重点プロジェクトの成功による製造強国への仲間入りを果たすとしています。その上で、2035年には製造強国の中でも中位に到達、建国100年に当たる2049年にはイノベーション先導で製造強国のトップクラスを狙うという壮大な戦略です。

インダストリー4.0の課題

ドイツのインダストリー4.0にしろ、他国のプロジェクトにしろ、いくつか乗り越えるべき課題があるのも事実です。最後に、今後深刻化すると思われる課題を指摘します。

中小製造業のIoT化

最大の課題は、中小製造業のIoT化です。

ドイツでは、日本同様に中小企業が製造業を支えています。中小企業の中には、IoTのようなデジタル技術に精通する人材の不足、そもそも手作業でうまくいっているのでIoT化するモチベーションが低いなどの課題が存在します。

インダストリー4.0では、国中の工場がIoT技術によって連携し合う姿を理想像として描いています。特定の先進的な大企業だけがIoT化すればよいわけではなく、製造業全体、全工程がIoT化を進める必要があるのです。

ドイツ政府では、製造業全体への資金投資や人材育成の支援などを通じてコンセプトの実現へ躍起となっています。

セキュリティ対策

インダストリー4.0に限らず、セキュリティ対策は急務です。IoTではモノ同士がインターネットを介して連携するため、ひとたびサイバー攻撃が発生するとコンピューターのみならずすべての機器が被害を受ける可能性が高いのです。製造ライン全体がサイバー攻撃の被害を受けたら、全生産が完全にストップするなど大混乱が発生することは火を見るよりも明らかです。

ネットワークの封鎖や外部からの侵入時に被害を食い止める方法など、セキュリティ対策を担保する方法論が大きな課題となっています。

ビッグデータの管理

最後に、ビッグデータを管理・分析する人材の不足が課題となっています。IoTやビッグデータに精通した人材はどの産業でも引っ張りだこであり、今後も慢性的な人材不足が予想されます。

デジタル人材の育成をどう急ピッチで進めるか、産業界のみならず教育界をも含めた取り組みが必要です。

インダストリー4.0で製造業は新たな産業革命を起こせるか

インダストリー4.0というコンセプトが提唱されてから5年以上経過しますが、国家プロジェクトともなると容易に実現できるものではありません。ドイツ政府は、2015年から2035年までの20年計画でインダストリー4.0を実現する計画です。2013年には、政府や産業界、労働組合を巻き込んでインダストリー4.0プラットフォームが設置されました。政治・外交・経済の影響を受けることなく、インダストリー4.0が順調に進展するのか今後も注目されます。

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