通信技術の発達に伴い、現代ではほとんどの人がクラウドコンピューティングを利用しているといえます。たとえば、メールの送受信や資料の編集といったビジネスシーンはもちろん、映画や音楽、さらに子供が遊んでいるゲームまでもがクラウドコンピューティングによって実現されているのです。ここでは、そんなクラウドコンピューティングの基礎知識と、利用する際のメリット・デメリットについて紹介します。
クラウドコンピューティングの基礎知識
今や私たちの生活に欠かせない存在となるクラウドコンピューティングですが、まずはクラウドコンピューティングがどんなものなのかを紹介します。
クラウドコンピューティングとは?
クラウドコンピューティングとは、サーバーやストレージデータベース、ネットワークといった各種コンピューティングサービスを、インターネットを通じて利用する仕組みをいいます。
クラウドコンピューティングは「クラウドプロバイダー」と呼ばれる企業によって配信されており、無料で利用できるものもあれば、使った分に応じた料金が請求される有料のものもあります。
具体的にどんなサービスがあるかというと、前述したようにメールやドキュメントを編集するものや、動画・画像を保存できるものなどさまざまです。インターネットサービスを利用している人のほとんどは無意識にクラウドコンピューティングを使っていることが多いです。
そんなクラウドコンピューティングは2006年頃に誕生したテクノロジーでまだ10年ほどしか経っていませんが、今や世界中の多くの企業や政府機関、非営利団体などがあらゆる目的でクラウドコンピューティングを活用しています。
クラウドコンピューティングを活用した主なサービス
クラウドコンピューティングには主に「SaaS・PaaS・IaaS」の3つの種類があり、それぞれ違ったサービス上に構築されます。これら3つのタイプを総称してクラウドコンピューティングと呼ぶこともありますが、実際に利用する場合はそれぞれの定義や違いを理解し、ニーズに合ったサービスを選ぶのが良いでしょう。
・SaaS(Software as a Service)
SaaSは直訳すると「サービスとしてのソフトウェア」という意味で、個別に活用していたソフトウェアをインターネット経由で他の人と共有する手法をいいます。ソフトウェアというのは簡単にいうとコンピュータを動かすためのプログラムのことで、スマートフォンのアプリケーションやパソコンのOSなどもソフトウェアになります。
SaaSは、必要な情報やデータをインターネット上に保存することができ、さらにどのデバイスからでもアクセスができる、つまり閲覧ができるというのが大きな特徴です。そのためスマートフォンやタブレット、パソコンのブラウザーから接続するのが一般的で、有名なサービスには「Google Apps」や「Office Web apps」があります。
・PaaS(Platform as a Service)
PaaS「サービスとしてのプラットフォーム」というのは、ソフトウェアやアプリケーションの開発やテスト、配信、管理をするためにオンデマンド環境を提供するものです。つまり、インターネット上のサービスとしてプラットフォームを提供するクラウドコンピューティングのことをいいます。
SaaSではソフトウェアやアプリケーション、基盤のインフラストラクチャの管理をクラウドプロバイダーが行うのに対し、PaaSでは開発者が低コスト、且つスピーディーにシステム開発を行います。例としては「Google App Engine」や「Microsoft Azure」などが有名です。
・IaaS(Infrastructure as a Service)
IaaS「サービスとしてのインフラストラクチャ」は、3種類の中で最も基本となるクラウドコンピューティングです。IaaSでは、情報システムの稼働に必要となるサーバーや仮想マシン、ネットワーク、といったインフラをインターネット上のサービスとして提供します。需要に応じてスケールアップやスケールダウンが可能になっているため、IaaSを利用するとサーバーに必要なハードウェアやスペックを自分で選ぶことができるのです。
IaaSではクラウドプロバイダーがインフラストラクチャを管理しているため、利用者は主にオペレーティングシステムやアプリケーションを購入し管理を行うようになります。IaaSのサービスとしては「Google Compute Engine」や「Amazon Elastic Compute Cloud」などが有名です。
クラウドコンピューティングのメリット
クラウドコンピューティングは誕生初期から非常に多くの企業で利用されているだけに、それだけ大きなメリットを持ち合わせているといえます。
コストパフォーマンスが良い
まず利用者にとって嬉しいのは、使用したリソース分の費用のみを支払えばよいため、コストパフォーマンスが良いという部分です。
本来であればデータセンターやサーバーに多額の資金を支払って利用するものでしたが、クラウドコンピューティングを利用することでデータセンターやサーバーの手配が不要なのはもちろん、ハードウェアやソフトウェアの購入、運用までが不要となり、費用をかなり抑えることができます。
容量が大きい
アプリケーションの導入に先立ってはインフラの容量が重要になるので、後々容量不足にならないよう、大きめの容量で契約をするものです。しかし、この場合は高額なコストと無駄なリソースの両方が発生し、とても効率的とはいえません。
クラウドコンピューティングでは基本的にデータ容量や速度制限はなく、インターネット環境さえ整っていればスムーズに処理を行うことができます。また、必要に応じてリソースの増減やスケールの変更を行えば、大量のデータを保存することも可能です。
インターネット環境があれば利用できる
クラウドコンピューティングというのは仮想化技術によって成り立っている仕組みですので、インターネット環境さえあればどこからでも利用することができます。イメージとしては銀行と同じで、データや情報(お金)をクラウド(銀行)に保存し、自宅のパソコンやスマートフォンといったさまざまな端末(ATM)からアクセスして利用します。
そのため、場所に依存せず作業を行うことができるのです。
クラウドコンピューティングのデメリット
ここまではクラウドコンピューティングのメリットを紹介してきましたが、実はデメリットになる部分も存在します。
カスタマイズしづらい
クラウドコンピューティングの主体となる「クラウド」では、システムやアプリケーションがパッケージ化されているのが基本です。そのため自由度が低く、細かいカスタマイズには向かない傾向にあります。独自性の高いオリジナルシステムを使用したい場合は、自社でインフラを保有する方が快適だといえるでしょう。
ネットワーク障害が起きるおそれがある
クラウドコンピューティングは便利であるゆえに、システムやデータ管理といった部分においてもサービス会社に依存しやすくなります。そのため、サービス会社側のネットワークに障害が起きた場合やメンテナンス時などはクラウドコンピューティングが利用できないというデメリットもあるのです。
また、最悪の場合は保存していたデータが全て消滅する可能性もありますから、バックアップを作成するなど自分で対策をとることが重要です。
情報セキュリティにリスクがある
先ほど、クラウドコンピューティングはさまざまな企業が利用していると紹介しましたが、それだけ多くの情報が保存されているといえます。重要機密や個人情報も保存されていますから、悪意ある者のクラッキングによって情報漏洩のリスクも高いといえます。
また、ネットワークに通じているということは「誰でも侵入ができる」と同じことですので、十分なセキュリティ対策が必要です。
クラウドコンピューティングが革命をもたらす
さまざまな革命を遂げている現代において、多くの企業はクラウドコンピューティングを利用することで利便性がはるかに向上しています。また、企業のみならず私たちの生活にも深く関連しているシステムですので、この機会に普段何気なく使っているクラウドコンピューティングについて、知識を深めてはいかがでしょうか。