なくならない職業とは?AI時代の子供たちに身に付けさせたいスキル

ガッツポーズの青年

2013年、オックスフォード大学の准教授であるマイケル・A・オズボーン氏の発表した『雇用の未来—コンピューター化によって仕事は失われるのか』という論文が世界に衝撃を与えました。AI研究者のオズボーン氏は、AIの発展と社会の変化を分析した上で、10年後になくなる可能性の高い順に702もの職業をランク付けしたのです。また、日本でも野村総合研究所が「2030年までに労働人口の約49%がAIに代替可能となる」という研究結果を発表しています。

この論文の発表により、「AIによって仕事が奪われる」というSF的な現象が現実のものとなりつつあることが明らかとなりました。今回は、オズボーン教授の論文をもとに「なくなる職業」「なくならない職業」の傾向を概観するとともに、子供に身に付けさせたいスキルをご紹介します。

AIの進化で今後なくなる可能性があると考えられている職業

AI(人工知能)の発達によって、これまで人間が担っていた仕事の一部が機械に置き換わるとされています。どんな職業が挙げられているのか、いくつかご紹介しましょう。

マニュアル化が可能な職業

単なる情報管理のようにマニュアル化できる業務については、人間の携わる余地がどんどん減っていくと考えられています。オズボーン教授の論文でも、「税務処理(Tax Preparers)」「図書館技術係(Library Technicians)」などの職業の代替可能性は99%である、という分析結果が示されています。

また、輸送やインフラ管理の職業もこのカテゴリーに含まれるかもしれません。AIを駆使した自動運転が実用化されると、これらの職業(業界)を一変させるようなインパクトを持つことになるかもしれません。論文の中でも、「貨物運送業者(Cargo and Freight Agents)」「物流管理者(Shipping, Receiving, and Traffic Clerks)」などが挙げられています。

専門性の低い職業

専門性が低く、誰でもできるという特徴を持つ仕事もAIに置き換わる可能性が高いです。オズボーン教授の論文では、「コールセンターのテレマーケター(Telemarketers)」や「口座開設担当者(New Accounts Clerks)」、「保険事務員(Insurance Underwriters)」「データ入力作業員(Data Entry Keyers)」「レジ係(Order Clerks)」などがいずれも代替可能性98%ないし99%の職業として挙げられています。

現在はクリエイティブな仕事として認められていても、実は業務の多くがデータ入力を始めとした「単純作業」で成り立つというものもあります。たとえば、Webデザイナーが典型でしょう。論文でも、「ネイリスト(Manicurists and Pedicurists)」が挙げられています。こうした職業も、AIからすると本当にクリエイティブな部分以外は自動化可能と言えるかもしれません。

高度な知的判断が必要な職業

驚くべきことに、マニュアル化が可能なわけでも専門性が低いわけでもなく、高度な知的判断を必要とするはずなのに、代替可能性のある職業も存在します。例を挙げると、会計士や弁護士、税理士、経営コンサルタントのような士業です。

こうした職業の生み出す価値の源泉は、膨大な法律および事務手続きに関する知識=データにあります。普通の人間が一朝一夕に覚えきれないデータであっても、AIなら容易に保存・分析ができると考えられます。実際に、行政手続きの電子化が進んだエストニアでは「税理士・会計士が消滅した」という雑誌記事が出たこともあるほどです。

オズボーン教授の論文では、代替可能性の高い職業として士業はランクインしていません。しかし、AIが人間の知能をあらゆる面で圧倒する「シンギュラリティ」の到来も予測されていることを踏まえると、こうした職業でさえAIの影響からは絶対になくならないとは言えません。

AI時代になっても、なくならないとされる職業とは

AIに置き換えられやすい職業をいくつかご紹介しました。それでは、逆にAIが一般化しても問題のない職業にはどんなものがあるでしょうか。

抽象的概念を扱う職業

映像や絵画、音楽など、抽象的概念を扱う職業は本質的にクリエイティビティを必要とするため、AIには難しそうです。デザイナー、映画監督、漫画家、アートディレクター、ミュージシャンなどが考えられます。オズボーン教授の論文でも、「振付師(Choreographers)」「デザイナー(Set and Exhibit Designers)」「メイクアップアーティスト(Makeup Artists)」「音楽ディレクター、作曲家(Music Directors and Composers)」などが挙げられています。

ただし、過去の絵画や音楽などのビッグデータを読み込ませることで、芸術的な作品に近いものを生み出せるAIは開発されつつあります。そうなると、上記の職業であっても安全地帯とは言えないかもしれません。

相手の感情を読み取る必要がある職業

人間の感情の機微に触れる分野の職業は、なかなかAIに置き換わらないと考えられます。データ化が難しいためです。医師や教師、カウンセラーやケアマネージャーなどの職業がここに入ってきます。論文中でも、「レクリエーションセラピスト(Recreational Therapists)」「メンタルヘルスおよび薬物利用者のソーシャルワーカー(Mental Health and Substance Abuse Social Workers)」「内科医・外科医(Physicians and Surgeons)」「小学校教員(Elementary School Teachers, Except Special Education)」などが挙げられています。

これから需要が増えると予想される職業

予測は容易ではありませんが、新たなテクノロジーの出現に伴って需要の増える職業、新たに生み出される職業もあるでしょう。

一例として、新たなテクノロジーの使い方や扱い方を支援する職業が考えられます。既に、ビッグデータを扱うデータサイエンティストの需要は高いとされています。ほかにも、ロボットのトレーナーや3Dプリンターのメーカー、仮想通貨の管理アドバイザーなどが人気を集めるかもしれません。

世界的に長寿化が進展すると予想されることから、高齢者を対象とした産業も大きくなるでしょう。

本格的なAI時代に備えて子供に身に付けさせたいこと

さらなるテクノロジーの発達により、「AI時代」の到達も近いでしょう。そんな時代に向けて、子供にはどんなスキルを身に付けさせるべきでしょうか。

プログラミングスキル

まず考えられるのは、プログラミングスキルです。現在の日本でも、プログラマーを始めとした情報処理のスキルを持つ人材の不足が指摘されています。

日本では「プログラマー」「システムエンジニア」と言うと、多忙なのに収入の低い職業というイメージが未だに強いのですが、世界的に見ると高収入で自由な働き方のしやすい職業となりつつあります。将来を心配する保護者にとって、子供に身に付けさせたいスキルの第一候補に入ってくるのではないでしょうか。

政府もプログラマーの不足や国民の情報処理リテラシーの不足を課題として認識しており、2020年度からは小学校でもプログラミング教育が必修化されます。こうした動きを見据えて、子供にプログラミングを習わせてみるのもよいでしょう。

なお、プログラミングスキルは単にプログラム作りだけに役立つものではありません。「やりたいこと」を機能に分解し、場合分けするなどの論理的思考力が身に付きます。子供が仮にプログラマーやプログラミングに関係のない仕事に就いたとしても、プログラミングを通じて身に付けた思考習慣が役立つ可能性は大いにあります。

主体的に学ぶ姿勢

親や先生から「勉強しなさい」と言われたから勉強する、という受け身の学習意欲は、ますます複雑化するこれからの時代にはそぐわなくなるでしょう。自ら疑問を持って情報収集し、整理して結論を出すという主体的な姿勢が求められます。今の大人の持つ職業観は、子供が成人する頃には陳腐化している可能性があります。大人の「常識」に囚われず、自ら生きる道を見つけて進む力が必要なのです。

その意味で、「アクティブラーニング」という学び方は注目に値します。アクティブラーニングとは、体験学習やディスカッション、グループワークのように、学習者が能動的に取り組む学習スタイルです。政府や教育関係者からも注目が集まっていることから、今後の学校教育でも導入が進むと予測されます。

コミュニケーション力

AIで代替されにくいと考えられる職業の中には、カウンセラーや医師、教師、マネージャーなど対人スキルを必要とするものが多くありました。今後も、人間の感情を読み取ったり指導したりする能力は必要であり続けると推測されます。

主体的に学ぶ力とも関係することですが、他者と協働して解決を図る能力はますます重要となるでしょう。ビジネスで解決するべき課題の多くは、自分一人では解決できません。他者と課題について検討し、作業を定義し、調整して実行に移すまでの過程で、コミュニケーション力が重要であるのは明らかです。

AIを前提としたキャリア観を持つことが重要

オズボーン教授が論文で「AIに置き換えられる職業」「AIに置き換えられにくい職業」を名指ししたことで、新たなテクノロジーの発達を脅威とみなす意見も出ています。しかしテクノロジーの発達を防ぐことはできませんから、私たちにできるのはAIを前提としてキャリアプランを検討することでしょう。

オズボーン教授がAIに置き換えにくいとした職業であっても、本当に置き換えられないとは限りません。これからも確実にニーズの高い職種や能力を躍起になって追い求めるより、10年後や20年後に大きくなる子供の好奇心と意欲を大切にすることが保護者の役割と言えるのではないでしょうか。

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