人工知能(AI)の進化で変わる医療の未来とメリット・デメリット

手のひらに乗る病院マーク

近年、人工知能(AI)はテレビやニュースでもよく取り上げられており、企業システムや検索エンジン、自動車の自動運転などさまざまなシーンで活用されていることがわかります。そして、最近では医療分野でも人工知能が導入されるようになり、世界的な注目を集めているのです。

そこで、今回は医療分野における人工知能の活用事例や人工知能を導入するメリット・デメリットについてご紹介します。

人工知能(AI)の基礎知識と医療分野での活用事例

人工知能(AI)というと「ロボット」をイメージする人が多いと思います。しかし、実際はもっと奥深いものであり、そこにはテクノロジーの超大作ともいえる素晴らしい技術があります。

人工知能の基礎知識

人工知能とは、人間の脳機能をコンピュータ上で再現しようとする技術のことで、「ニューラルネットワーク」によって構成されています。

ニューラルネットワークは、脳の神経細胞の仕組みをコンピュータ上で再現する数理的なモデルです。このニューラルネットワークをさらに多層化し、人工知能の学習レベルを高めること(ディープラーニング)によって人工知能に学習をさせます。つまり、人工知能が学習をすることでさまざまなことをコンピュータが自分で判断できるようになるのです。

人工知能はすでに私たちの生活の中にも多く存在しています。例えば、防犯カメラやセキュリティーの防犯対策などには「自動認識機能」が搭載されており、登録した画像や音声をもとに人工知能が自動で判断を行います。また、自動車の「自動運転機能」では画像認識機能を活用し、視覚情報をもとに運転するという人間のプロセスと同様の判断をすることで運転が可能となっているのです。

さらに、私たちが普段使うパソコンやスマートフォンの検索エンジンにも人工知能が活用されているのを知っていますか?
人工知能はサイト内で使用されているキーワードからそのサイトの特徴を認識し導き出したアルゴリズムによって、検索者の検索意図に近いWebサイトから上位表示をしています。これにより欲しい情報がすぐ手に入るようになるのです。

【人工知能の一般的な活用事例】

 自動認識機能
 自動運転機能
 検索エンジンの最適化など

医療分野での人工知能の活用事例

医療分野における人工知能の活用は、大きく3つの分野に分けられます。

1つ目は人工知能による診察支援システムです。
診察の際、人工知能が患者と医師の対話を認識し、その内容をもとに患者の病名候補を導くとともに病名ごとに推奨する検査や薬剤の提案も行ってくれます。

2つ目はディープラーニングを用いた画像診断システムです。
網膜眼底画像やレントゲン、CT画像から人工知能が病気のリスクを予測することで、病気の早期発見や診断制度の向上に貢献することができます。

そして3つ目は意思決定支援システムです。
がん患者の遺伝子データを入力すると人工知能が速やかに遺伝子情報を呼び出してくれるというもので、がんに関する論文を2000万件以上も学習しています。意思決定支援システムは、アメリカのIBM社が開発したAI「Watson(ワトソン)」が代表的で治療法の指南を行ったという実績もあります。

2015年7月、Watsonを導入した東京大学医科学研究所では、血液疾患専門の医師でも診断が難しい特殊な白血病「二次性白血病」をわずか10分で解析しました。その後、解析結果に沿った治療を行った結果、60代の女性患者の命が救われ大きな話題となったのです。

人工知能(AI)を医療に導入するメリットとデメリット

こうして見ると、医療分野で人工知能を活用することは非常に良いことだと思えますがメリットとなる反面、デメリットになることも多々あるのです。

人工知能を医療に導入するメリット

医療に人工知能を導入することは、膨大な医療データの読み込みや処理、さらに必要なデータの抽出などが可能となり医療現場の負担を大きく軽減することが可能です。また、人工知能の判断を人間がダブルチェックするなど、医師が人工知能の判断を参考にすることで、より正解な診断を迅速に下すこともできます。

患者側としてもWatsonの事例でもあったように人工知能の活用によって重大な症状に対していち早く対処することができます。病気の予防にも有効だといえるでしょう。

人工知能を医療に導入するデメリット

人工知能は、自分が学習したデータをもとにさまざまな判断を下します。そのため、新種のウイルスや疾患といった学習していない症状には対応することができません。
そして、人工知能の判断はディープラーニングによって構成されたニューロンネットワークによって導き出されているため、正確なプロセスがわからないというのが現状です。このことから人工知能の判断をどこまで信頼するかというのが問題になるでしょう。

また、人工知能による判断でも責任の所在は医師となるのが現状ですが、今後は人工知能の活動範囲が広がることにより責任の所在の判断が難しくなるほか、医師が人工知能の判断に依存してしまう可能性もゼロではありません。

最終的な判断は医師が行うようにしたり、患者が安心できるよう心情を考慮した対応を心掛けたりするなど改善するべき部分も多く存在します。

医療業界における人工知能(AI)の可能性

医療分野における人工知能の導入は、まだ多くの課題があるのが現状です。しかし、人工知能の技術は日々進化を遂げており、今後の可能性に大きな期待が寄せられています。

医薬品の開発

人工知能は、膨大なデータの中から適した情報を見つけるのが得意です。
そのため、過去の研究結果や症状などを人工知能に整理させれば、研究の時間やコストを大幅に制御することができるでしょう。

ゲノムの研究

ゲノムとは、遺伝子と染色体から合成されたもので、生物が持っている遺伝子情報のことをいいます。人工知能に膨大なゲノムのデータを学習させれば、疾患が発生する可能性を予測できたり、未知の化合物が未知の疾患にどんな効果をもたらすのかを予測したりすることができます。

介護

介護分野で人工知能を活用することは、現代の人手不足を解消してくれる効果が期待できます。近年ではAI搭載の介護ロボットなども開発されており、顔認証機能で対話ができるほか、相手の表情から感情を読み取り、それに合った会話をすることも可能です。

このように、介護者の代わりに人工知能がコミュニケーションを取ってくれるため、介護士の負担を軽減することができます。

手術

これまでも手術現場で使われているロボットは存在していましたが、いずれも外科医の遠隔操作による手術となり人工知能が自律的に動作するというものではありませんでした。しかし、自律的に手術が行える自律ロボットの開発が進めば、医師による遠隔操作も必要もなくなり、より多くの手術をこなせるようになるでしょう。

将来はロボット診療が主流になる可能性も…

人工知能という言葉が普及し始めたのはごく最近のことですが、私たちの生活には多くの人工知能が活用されています。

現在は医療分野における人工知能の開発が盛んに行われており、「医師不足」「医師の負担の大きさ」といった医療問題の解決が期待されています。まだまだ課題が多い状況ではありますが、テクノロジーの開発はもの凄い速さで進んでいますので、ロボットが診療する時代はそう遠くはないのかもしれません。

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