近年では人工知能のニュースを目にすることが多く、目覚ましい発展を遂げているのが目に見えて実感できるようになってきました。「第三次AIブーム」ともいわれる現在、人工知能はさまざまなシーンで導入されており、普段当たり前のように使っているものにも人工知能が活用されていたりします。しかし、人工知能には大きな課題があり、このまま進化し続ければ今の子供たちに影響が出ると考えられるのです。
ここでは、人工知能の具体的な活用事例と、今後の大きな課題について紹介します。
人工知能(AI)の特徴と可能性
人工知能という言葉は知っていても、実際にどんなものなのかを知らない人も多いと思いますので、まずは人工知能について解説します。
人工知能とは
人工知能は「AI(Artificial Intelligence)」とも呼ばれるもので、簡単にいうとコンピュータに人間と同様の処理を行わせる技術のことをいいます。人工知能には人間の脳神経系のニューロンを模した「ニューラルネットワーク」が活用されており、さらにディープラーニング(深層学習)によって飛躍的な進化を遂げました。
ディープラーニングというのは、人間が機械に情報を教えるのではなく、機械が自分で学習するというシステムです。これを利用することにより人工知能は膨大なビッグデータ(インターネットやスマートフォンを通した位置情報、行動履歴や、ホームページやテレビの閲覧、視聴に関する情報などから得られる膨大なデータ群)の中から適切な情報を素早く見つけ出し、学習や推論、判断などができるようになったのです。
人工知能ができること
人工知能は具体的にどんなことができるかというと、人間の脳では処理しきれない膨大なデータを瞬時に処理できたり、データや経験をもとに自ら学習し、臨機応変な判断や論理的な推論をあげたりすることができます。
そのため、人間が目の前の人や物を認識するのと同じような画像解析や、認識した画像の音声説明、逆に聞こえた声で内容を判断する音声解析なども可能です。そんな人工知能を生活やビジネスシーンに導入することで、作業の自動化や効率化につながるといえるでしょう。
人工知能が活用されている例
今や幅広い分野で活用できるようになった人工知能は、既に多くの会社や企業で活用されています。ここでは、具体的な活用例を3つ紹介しましょう。
自動車の自動運転技術
自動車の自動運転というのは、人間の代わりに人工知能が運転をしてくれるという技術です。現段階では、画像認証や音声認識によって得た情報から、危険を事前に察知して運転者に知らせる技術が普及していますが、最終的には全自動運転を目標に開発が進んでいます。
この自動運転が可能となれば、疲労や感情の変動によって見落としがちな危険を認識し事故を回避できたり、運転者のストレスや疲労を大幅に軽減したりすることができるでしょう。
インターネットの検索エンジン
私たちが普段パソコンやスマートフォンで利用する検索エンジンは、人工知能の活用例として最も身近なものだといえます。Googleなどでキーワードを入力して検索すると、人工知能がWebサイト内で使用されているキーワードからサイトの特徴を認識し、最適なものを表示してくれているのです。
また、質の低いコンテンツや有害サイトを見極めて排除するといった機能も搭載されています。
人工知能を活用することで検索エンジンが最適化され、ユーザーが欲しい情報をより探しやすくなるといえるでしょう。
電話オペレーション業務のサポート
最近では人工知能を導入するコールセンターも増えており、音声ガイダンスに従って操作をしてからオペレーターが対応するというシステムも珍しくありません。逆にコールセンター側でも、顧客との会話を音声認識機能が分析し、問題解決につながる情報をオペレーターに提示してくれるといった手法が登場しています。
これによりスムーズに、且つ的確な回答ができ、顧客満足度のアップにつながるといえるしょう。また、顧客のみならず、オペレーター不足という問題を抱える企業にとってもメリットとなります。
人工知能の現状と今後の課題
人工知能は1960年代から研究・開発が進められてきましたが、現状はどのくらいのレベルで、今後の課題としてどんなものがあるのでしょうか。
飛躍的な進歩を見せる人工知能
人工知能は約60年にも及び開発が続けられてきましたが、急激に進化し始めたのは2000年代のディープラーニングが誕生してからです。それからというもの輪をかけたように進化スピードが上がり、近い将来人間の処理能力を超えるといわれています。
とはいえ、2016年に行われた「人工知能vs人間」の囲碁対戦では見事人工知能が人間に勝利しました。その後将棋やチェスでも続々とプロを負かしている状態です。現在は、人工知能の技術開発プロジェクトとして電王戦が盛んに行われており、さらなる飛躍が期待されています。
人工知能の今後の課題
今後も進化し続ける人工知能には、大きく分けて「責任の所在」「人工知能の判断基準」「失業者の増大」と3つの課題があるといわれています。
・責任の所在に関する判断が難しい
責任の所在というのは、万が一人工知能を利用してトラブルが起きた際、誰が責任を負うべきなのかという問題です。例えば、人工知能に判断を任せた結果大きな事故につながったとしましょう。この場合、人工知能を扱っている人間に非があるのか、それとも人工知能を開発した人の過失なのかといった判断が非常に難しくなります。
実際に判断をした人工知能自体は責任が取れませんから、責任所在の判断基準を設け、問題が起こった際にどういった対処を行うかを明確にする必要があるのです。
・人工知能の判断基準がわからない
人工知能は膨大なデータの中から必要に応じた情報を分析し判断を行います。しかし、これら一連の動作は全て自動で行われるため、時としてその根拠が把握できなくなるのです。
人間が判断した場合は判断するまでの経緯や理由を説明することができますが、人工知能の場合はプロセスを説明できませんので、説明を求められるシーンなどでどう対応するかというのが課題となっています。
・失業する人が増える
これまで人間が行っていた作業が次々に機械化されることが予測されます。人工知能が人間を超えればさらに活用分野が増え、今まで必要だった人手が不要となり大量の失業者が出ることになるのです。
また、人工知能によって一定の職種が淘汰された場合、その職種の人全員が失業することになるため、さらに失業率が高まるおそれもあります。人工知能に依存しすぎることによって人間の技術や知能が劣化する可能性も十分に考えられるでしょう。
「人間は人工知能に支配される」と考える人も多いですが、そうならないためにも今から対策を立てておく必要があるといえます。
課題に対する取り組み次第で未来は大きく変わる
人工知能は人間の負担を軽減するために誕生したテクノロジーです。飛躍的な進化を遂げることによって多くの不可能が可能になり、ここ10年で私たちの生活も大きく変化しています。しかし、快適になる反面大きな課題があるというのも事実で、何もせずに放っておけば必ず人間に被害を及ぼすといっても過言ではないでしょう。
アメリカの主要発明家であるレイ・カーツワイルは「2045年までにシンギュラリティが起こる」と予測しており、人間によってつくられたテクノロジーが人間の手を離れ、自らの知能で新型ロボットの開発や問題点の改善を行っていくことになると言っています。
現代の子供たちはシンギュラリティを体験する年代ともいえますので、今後の人工知能の進化に注目しておくべきでしょう。