幼児はまだ分別が付いていないだけに、怒ったり注意したりする場面があるかと思います。ちょっとした言葉選びや表現を工夫するだけで、しつけの効果は生まれます。今回は、幼児へのしつけで大切なポイントや、強く叱ったときのフォロー方法をご紹介します。
幼児のしつけで意識すること
子供にとって正しい行動を促すものでなければ、しつけても逆効果になるケースがあります。幼児のしつけでは、以下のポイントを押さえてください。
なるべく否定しない
子供がいうことを聞かないと、つい「~したらダメ」と否定してしまいがち。そうではなく、「~してね」「~しようね」とお願いする口調に変えるだけで、子供に与える印象は変わります。
「こぼさないでね」「こぼしたらダメでしょ」のような言い方だと、子供には「こぼす」というイメージが付いてしまいます。これでは、どんな行動であればよいか、具体的なイメージがわきません。「お茶碗は大事に持ってね」という言い方であれば、「「大事に持つこと」に意識が向いて、こぼさないための行動にも結びつきやすくなります。
親からいきなり頭ごなしに命令口調でいわれると、子供は萎縮したり、戸惑ったりします。反抗的になってわざと逆らう行動に出るかもしれません。「してはいけない」ではなく、「してほしい」とお願いする言い回しを心がけましょう。
子供に理由がわかるようにいう
注意するときは、その行為がなぜいけないのかきちんと理由を説明してあげてください。ポイントは、先に怒ってはいけないこと。まずはダメな理由を説明しましょう。感情的にいきなり怒っても、子供は怖がるばかりでその行為の何が問題なのか分かりません。「お菓子を食べる時間は3時と決まっているでしょ?決まった時間に食べないと、夕食が食べられなくなるし、おなかの調子も悪くなるんだよ」とやさしく教えてあげましょう。子供はなぜ3時以外にお菓子を食べてはいけないのか、その理由がはっきりすることで、行動をセーブしようという心が働きます。
やっていいことと悪いことははっきりさせる
小さな子供は、まだ「やっていいこと」と「悪いこと」の区別が付きません。その区別を付けさせるのは、親の役目でもあります。言葉遣いや行動、日頃の生活態度など、悪いことをしている場面をみつけたら、はっきりとその行動を注意する必要があります。中途半端な言い方ではなく、なぜいけないのかの理由も含め、はっきりと伝えるようにしてください。
反対に、やっていいこと、できたことをみつけたら、ほめてあげることも忘れずに。ほめられると子供はうれしくなってその行動を積極的に取るようになります。しつけをする親が、正反対の行動に対してそれぞれ適切なリアクションを取ることで、子供も分別を持つようになるのです。
危険なことや重大な迷惑行為をしたときは強く叱る
ケガを招くような危険なこと、あるいは他人に迷惑をかけるような行為を子供がしたら、強く叱らなければなりません。とくに、公園などで遊んでいて道路にいきなり飛び出したら、命を落とす危険性もあります。そんなときは、その場でいけない理由を説明すると同時に、強く叱ることが大切です。
危ないことをしなくても、怒るときがあるかもしれません。日常的に怒る習慣があると、子供は慣れてしまいます。そうなると、危険なことに対して強く叱ったとしても、効果が薄れる恐れがあります。二度と危ない行為に走らせないためにも、子供に約束を守らせましょう。そして、それ以外の小さな行為は、約束というかたちでなく、軽く注意したり、話し合ったりすることで守らせるようにしてください。
幼児をしつけるときのシーン別ポイント
幼児をしつける際は、「なぜそれがいけないのか」理由を説明したうえで行いましょう
食事
箸やフォーク、スプーンの使い方は、頭でなく体で覚えさせることが大切。幼児ですので、どんなにしつけてもうまく使いこなすまで時間がかかるでしょう。上手に挟んだり、箸で運んだりできたときは、ほめてあげることも忘れずに。覚えられなくても叱ることはせず、粘り強くサポートする姿勢で教えていきましょう。
また、幼児は食事中、そわそわして落ち着かなくなることがあります。そんなときは、椅子の高さが合っているか、食卓に余計なものが置いていないか目を配りましょう。お腹いっぱいになっているタイミングも見落とさないでください。
生活習慣
トイレの仕方や手洗い、うがいの方法も、教え方や進め方が大切です。とくにトイレトレーニングは、子育て中のお母さん・お父さんにとって避けて通れない場面。教える時期や方法を間違えて子供がトイレを嫌いにならないように、やさしく丁寧に教える必要があります。
言ったとおりにきちんとできたら、必ずほめてあげてください。ほめられると、子供はその体験を覚えて繰り返すようになります。反対にできなかったときは、怒るのではなくなぜできなかったのか理由を聞いてください。その理由をもとに、できる方法をアドバイスしてあげましょう。できない理由とできる方法を子供が覚えることで、自主的に動くようになるのです。
言葉遣い・コミュニケーション
子供は、テレビやゲームからいろんな言葉を覚えます。その中には、下品な言葉や不適切な表現もあるでしょう。年齢によっては、子供に見せないほうがよい番組などもあるため、なるべく親と一緒の番組を見させるようにしてください。
幼児が意味も分からず下品な言葉を発したときは、親がきちんと諭す必要があります。その際、その言葉を使った理由を聞いてから注意するようにしましょう。
それでも、子供によってはまた繰り返してしまうことがあります。おそらくその言葉に強い興味を持っているのでしょう。歌を歌わせたり、別の遊びを提案したりして異なる対象に興味が向くよう誘導すれば、子供はその言葉から自然と離れていくかもしれません。
また、友達に対する言葉遣いが悪いときは、悪い理由を教えたうえで、「ごめんなさい」と言わせることも重要です。理由を理解すれば、子供も素直な行動が取りやすくなります。
思わずきつく叱ってしまったときのフォロー
きつく叱ってしまうと、子供の心は後ろ向きになってしまいます。親の言葉をなるべく前向きに捉えてもらうように、その後は必ずフォローを入れましょう。
親が先に態度を切り替える
子供は親に叱られると、「また怒られるのかな」と親の反応を注視します。叱った後は、「もう叱らない」というポーズをはっきり示しましょう。親のほうからアピールすることで、子供は安心し、「甘えても大丈夫」と思えるようになるのです。
くれぐれも、子供が先に変化するのを待たないようにしましょう。たとえ子供がそのしつけによって態度や行動を改めても、親が怖いことが動機になっている可能性があります。それだと信頼感や安心感は生まれにくくなるので、親のほうから先に態度を切り替えるようにしてください。
子供の気持ちをきちんと聞く
思わず強く叱ったときは、なぜ叱られたのか子供に理由を尋ねてみましょう。それによって子供は、自分の行為がなぜ間違いなのか、理解に努めようとします。子供自身に理解させることが重要です。そのステップがあって反省があり、行動の改善につながるのです。
愛情を伝える
怒った後は、愛情もしっかり伝えてあげましょう。怒られたことで、子供は「嫌われている」と思うかもしれません。そうではなく、愛情があるから叱る、ということを理解してもらうためにも、それを言葉でなく行動によって示してください。
「抱きしめる」「頭をなでる」「頬をすり寄せる」などのスキンシップが有効です。親の温もりを感じやすく、その体験は記憶に残ります。愛情表現の伝達も、大切なしつけのひとつです。
しつけの目的は、子供の成長のため
しつけは、怒ることが目的になってはいけません。子供を怖がらせてもダメです。なぜ間違っているのか、なぜ怒られているのか、その理由をまずは説明してあげましょう。理由が伝われば、子供も理解して正しい行動を取ろうとします。子供の成長にとって、どんなしつけが理想か、考えながら手順を決め、言葉を選んでください。そして、愛情を伝えることも忘れないでくださいね。